ご挨拶・活動理念
ご挨拶
那須野は 聞きしにたがわず 草も長からず 木というものは 木瓜さへもなし ・・・ 手にすくう水もなし 「続 奥の細道」
かつて荒野だった那須野ヶ原の地で、先人達の様々な苦労の果てに拓かれた水路が、水とともに地域へ活力をもたらしました。
那須野ヶ原には、歴史のある用水が多数あります。慶長年間(1596年~1615年)に開削された蟇沼用水、1763年(宝暦13年)に開削された穴沢用水、1885年(明治18年)に開削された那須疏水などです。
蟇沼用水は、下流域で栄えた大田原城下まで延長されており飲料用の水源として利用されていました。
穴沢用水は、農業用の灌漑用水として計画されていましたが、地質の影響により飲料水の確保程度にとどまってしまいました。
那須疏水は、那須野ヶ原の灌漑を目的に開削された用水です。
しかし、開削後新たにできた水田は、わずか40ha前後でした。日本三大疏水の1つ、安積疏水では4,260ha。実に那須野ヶ原の100倍です。開削後約30年が経過した1914年(大正2年)でさえ安積大地の約1/20、225haでした。昭和初期になり、どうにか500haまで増えましたが、その後増加は止まってしまいました。
これは、関東ローム層という地質が原因でしたが、当時提案された地下ダム構想がきっかけとなって、地下水に注目が集まります。これだけ水が浸み込む土地なので地下水はたっぷりとあるはずです。小型ポンプが普及し始めると、那須野ヶ原には競うように地下水を汲みあげる水田が増加しました。水路では増えなかった水田が、激増することになりました。
しかし、今度はこの過剰に増えた水田が新たな問題を引き起こしました。地下水の水位が下がり始めてしまったのです。さらに昭和40年代、地下水は次第に減少し、遂に枯渇さえ危ぶまれる事態となってしまったのです。
そして昭和42年に始まった国営事業(国営那須野原総合農地開発事業)によって整備された水利施設は、安定した水の供給を確固たるものとし、今日の豊かな那須野ヶ原の農業を支えています。
更新整備された330kmもの水路を通して、用水を供給することに伴い、6500万トンもの地下水涵養にも貢献しています。これは、水田に供給された用水が地下に浸透するためです。その他にも水田には地域を守る大きな機能を持っています。例えば洪水防止機能です。水田の畦は30cmもあるので、いくら大雨でも水は溜まり、急には川へ流れ出ません。この地の水田の貯水量は深山ダムの2.5倍です。また、水路も溢れた水を排除する大きな排水効果があります。
それと共に、農業以外でも広く地域に貢献し、那須野ヶ原全体の健全な水管理システムが構築されたと言えます。
これらの施設がなお一層の地域貢献に資するよう積極的に活用し、先人たちの苦労の果てに築き上げられたこの豊かな大地と、それを支える那須野ヶ原用水を末永く未来へ繋ぎ、地域の農はもとより、地域全体の更なる発展に寄与していくことを理念とし、農業用水と土地改良施設の適切な維持管理に努めて参ります。
基本理念
活動は、5つの基本理念のもとに展開しています。
- 那須野原総合農地開発事業によって造成整備された土地改良施設の適切な維持管理と、灌漑用水の安定供給。
- 那須野ヶ原開拓と水利開拓の歴史的背景の伝承と環境に対する豊かな感性と見識を持つ人を育て都市と農村の共生、人間と自然との共生を図る。
- 水田を中心とする農地資源は、食料の供給だけでなく洪水調節や防災などの環境保全機能といった多面的な役割も果していることに鑑み、都市と農村の共同システムの構築。
- 健全な水循環システム構築の一環として、自然エネルギー活用モデル地区の形成。
- 命の根源は『農』であることを最も大切な理念とし、環境保全型農業の一大拠点地域の確立を目指し、環境保全型農業の一層の推進により食の安全・安心に努めるとともに、地下水・河川等の水質保全のため、地下水・表流水・湧水の実態調査の継続と啓蒙普及の実践。
活動内容
主な活動内容として下記のような事例があります。
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施設の維持管理
那須野ヶ原土地改良区連合の事業の中でも施設の維持管理は重要度の高いものです。そのため施設管理講習会を毎年実施し、定期的に点検やパトロール、整備・補修は地域における水路等の安全を確実なものにするため、常に正確に迅速に行われるよう努めています。また、毎年4月から5月にかけて施設の一斉点検パトロールを行い、施設の適切な機能発揮に努めています。
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河川の生態系維持のための取水調整並びに扇状地内の水循環のための水管理
平成8年3月27日第33回当連合議員総会の議決を経て、地区内がどのように厳しい渇水年であっても、一定の水量(最低水量0.5㎥/s以上)を下流河川に放流するための取水調整を水管理センターにおいて毎日朝・タ実施しており、地区内における用水配分は、用水路毎の減水並びに番水(ローテーション)により節水に努め、河川下流域の生態系維持に貢献しています。
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洪水調整による地域への貢献
大雨や台風時に流入する地域雨水排水を安全に河川へ排除するために行う洪水調整として(平成15年度実績)4月から9月までで20mmを越える降雨の際のゲート操作は15回を数えました。その調整量は16000千㎥であり、この量は戸田調整池の16倍の容量に相当します。
通常、農業用水の調整は、代掻き・田植え・養生期・水田かんがい期以外の時期の4パターンに基づくゲート操作が基本ですが、昨今の異常気象の影響により、降雨による排水調整のためのゲート操作頻度が拡大傾向にあります。
今後、益々発生が予測される極地的集中豪雨に備え、随時遠隔監視制御機器の増設を進めてきました。 -
土地改良施設の総合学習の場に提供と食育活動支援
独自の副読本やパンフレット・看板等を作成し、小学生と父兄及び地域住民等へ多面的機能について周知を図るとともに、毎年約6500名の小学生の施設見学を受入(直接の施設見学コースは7万人〜8万人/年)、学校教育支援活動を実施中。子供達の「水」に対する意識向上に貢献してきました。
水の大切さを通じた環境教育を支援することにより、農家と非農家及び高齢者と若者の地域交流の場が構築され集落内の活気が復活し、高齢化に伴う集落機能低下に歯止めがかかるきっかけとなっています。 -
土地改良施設を利用した親水事業の整備と用水路毎の「水路愛護の日」の設置
地域住民と水利開発の歴史を共有するための公園整備などの親水事業を実施するとともに、約111km区間の用水路について非農家を含めた地域住民総出の水路清掃活動を行っています。
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土地改良施設の多面的利用の推進
主な利用方法の事例は下記のようになります。
- 調整池を利用しての納涼祭等のイベント
- 広域消防組合消防署による水難救助訓練及び栃木県防災ヘリコプターの取水基地に登録(赤田・戸田調整池)
- 那須野が原公園や水環境整備事業への修景提供
- カヌー教室、関東学生トライアスロン那須塩原大会、栃木トライアスロン大会、健康ウォークなどのスポーツ振興
- 地域消防団による放水訓練並びにパイプラインを利用して防火水槽への用水供給
平成15年9月に発生したBS火災の鎮火までに供給した農業用水量は82万m3に及び、水道水原量に換算すると2,728,000人分に相当します。
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地産地消エネルギー活用支援等
地下水汚染防止の一環としてバイオガス発電建設の事業化に向けて、平成15年度はNEDOとの共同研究、平成16年度は経済産業省の補助事業を導入し、実施計画書を策定しました。
扇状地内の水循環のための水管理を今後とも続け、きれいな水を次世代に継承していくため、土地改良施設の管理責任者として広域的な利水営農を推進し、水管理の補完的な役割を果たすことを目的として、環境保全型農業を実践し、その効果を検証するために継続した水質調査を実施しています。
今後もその貴重な水を管理している“水土里ネット那須野ヶ原”は水の循環という大きな枠組みの中で「きれいな水を次世代に継承」をスローガンに様々な活動を積極的に推進して参ります。